任意後見

任意後見

 将来の認知症に備えて、今から準備できる任意後見制度についてご紹介します。ご自身の意思を尊重した後見人の選任が可能です。

任意後見とは(法定後見との違い)

 任意後見制度は、将来、認知症などにより判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約を結んでおく制度です。
 法定後見制度とは異なり、ご本人の意思が尊重される点が大きな特徴です。ご自身で後見人を選び、委任する内容を決めることができます。

任意後見と法定後見の比較

比較項目任意後見制度法定後見制度
概要・目的本人が元気なうちに、将来判断能力が低下した時に備えて契約しておく制度。
任後法2条
すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が支援者を選任する制度。
民法7条等
開始のタイミング判断能力があるうちに契約を結ぶ。
※効力発生は判断能力低下後、監督人が選任された時から。
※任後法4条
判断能力が低下した後に申し立てを行う。
※民法7条, 11条, 15条
後見人の選び方本人が自由に選べる
(信頼できる親族や専門家など)
任後法2条1号
家庭裁判所が選任する
(本人の希望通りになるとは限らない。親族以外の専門家が選ばれることもある)
任後法2条1号
契約・手続の方法公証役場で公正証書を作成する必要がある。
任後法3条
家庭裁判所へ審判の申立てを行う。
家事事件手続法
権限の範囲
(代理権)
契約で決めた特定の行為に限られる。
(ライフスタイルに合わせて自由に設計可能)
任後法2条1号
法律および家庭裁判所の審判で定められた範囲。
(類型により包括的な代理権がある場合も)
民法859条等
取消権
(契約の取消し)
原則なし
(本人が騙されて高額商品を買っても、後見人が取り消すことはできない)
あり(類型による)。
(本人が行った不利益な契約を後見人が取り消せる)
民法9条, 13条, 17条
監督体制裁判所が選任する「任意後見監督人」が監督する。
任後法7条
家庭裁判所が直接監督するほか、必要に応じて「後見監督人」がつく。
民法863条
死後の事務特約を結べば、死後事務(葬儀や手続き等)も委任可能。
契約自由の原則
原則として本人の死亡により終了する。
(ただし、緊急性がある場合など限定的な権限はある)
民法873条の2
【参考】重要な違いのポイント解説

① 「取消権」の有無(消費者被害への対応)
これが最も大きな法的違いの一つです。

  • 法定後見には、本人が悪徳商法などで不要な契約をしてしまった場合に、後見人がそれを取り消す権限(取消権)があります(民法9条など)。
  • 任意後見には、この取消権がありません。あくまで「本人の代わりに契約をする代理権」を与える制度だからです。詐欺被害などが心配な場合は、法定後見の方が適している場合があります。

② 本人の意思の尊重

  • 任意後見は、「誰に」「何を頼むか」を自分で決められるため、「自分の将来を自分でデザインする」という意味合いが強いです。
  • 法定後見は、国の制度として本人を保護する側面が強く、後見人の選任権は裁判所にあります。

③ 類型の有無

  • 任意後見には類型(ランク)はありません。
  • 法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて以下の3つの類型に分かれます。
    • 後見: 判断能力が全くない(常に支援が必要)
    • 保佐: 判断能力が著しく不十分(重要な行為に支援が必要)
    • 補助: 判断能力が不十分(特定の行為に支援が必要)

契約締結までの流れ

1 初回相談

 任意後見制度についての説明を受け、ご自身の状況や希望について相談します。

2 契約内容の検討

 任意後見人の候補者や委任する事務の範囲、報酬などについて検討します。

3 契約書の作成

 公証役場での公正証書作成に向けて、契約書の内容を確定させます。

4 公正証書による契約締結

 公証役場にて公正証書を作成し、任意後見契約を締結します。

 任意後見契約は、公正証書で作成することが法律で定められています。これにより、契約の内容が明確になり、後々のトラブルを防ぐことができます。

公正証書作成

公正証書の重要性

 任意後見契約は必ず公正証書で作成する必要があります。公正証書には以下の内容が記載されます。(任意後見契約に関する法律第3条(方式)任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。)

  • 任意後見人の氏名・住所
  • 委任する事務の内容
  • 任意後見人への報酬
  • 任意後見監督人選任の申立てに関する事項

 公証役場での手続きには、本人確認書類や印鑑などが必要です。公正証書作成により、契約の法的効力が保証されます

発効(任意後見監督人選任の選任)

 任意後見契約は締結しただけでは発効しません。ご本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てを行い、監督人が選任されることで初めて契約が発効します。

監督人の役割

 任意後見人の事務を監督し、不正な行為を防止します。定期的に任意後見人から報告を受け、必要に応じて家庭裁判所に報告します。

申立ての時期

 医師の診断書などにより、ご本人の判断能力が低下したと認められる時期に申立てを行います。

申立ての方法

家庭裁判所に必要書類を提出し、審査を経て監督人が選任されます。

費用の目安・期間

契約締結時の費用

公正証書作成費用約1〜3万円
報酬約5〜10万円

発効時の費用

家庭裁判所への申立費用約10,000円
診断書取得費用約5,000円〜10,000円

発効後の費用

任意後見人への報酬約20,000円〜50,000円程度
任意後見監督人への報酬約10,000円〜20,000円程度

 契約から発効までの期間は、ご本人の判断能力の低下状況によって異なります。契約締結後すぐに発効する場合もあれば、数年後、あるいは発効しないまま終了する場合もあります。

家族信託との組合せ

 任意後見制度と家族信託を組み合わせることで、より包括的な財産管理と身上保護が可能になります。

 家族信託では財産管理を、任意後見では身上監護を中心に役割分担することで、相互補完的な保護体制を構築できます

家族信託財産の管理・運用・承継を目的とした制度
任意後見身上監護(医療・介護など)と財産管理を目的とした制度

家族信託の詳細はこちら

よくある質問

Q
任意後見人は誰に頼めばよいですか?
A

 信頼できる家族や親族、専門家(弁護士・行政書士など)に依頼することができます。複数人を選任することも可能です。

Q
契約後すぐに効力は発生しますか?
A

 いいえ、契約締結後すぐには効力は発生しません。ご本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てを行い、監督人が選任されて初めて効力が発生します。

Q
法定後見と併用できますか?
A

 法定後見が開始されると、基本的には任意後見契約は終了(または発効しない)という扱いになり、法定後見へ切り替わることになります。
 すでに任意後見がスタートしている場合は、法定後見の開始とともに、任意後見契約は終了します。
 まだ任意後見がスタートしていない場合は、任意後見契約自体は解除されませんが、法定後見が優先され、任意後見の発効は妨げられます。
 つまり、実質的には「併用」ではなく「任意後見では守りきれないため、より強力な法定後見へバトンタッチする」というイメージで理解しておくと間違いありません。

安心の未来のために

早めの準備が重要です

 判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくことで、将来の不安に備えることができます。

ご家族との話し合いを

 ご家族にも任意後見契約の内容を理解してもらうことで、将来のトラブルを防ぐことができます。

当事務所にご相談を

任意後見制度は専門的な知識が必要です。当事務所にご相談ください。任意後見制度で、あなたの意思を尊重した将来の安心を確保しましょう。

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    ※初回相談は無料です。秘密は厳守いたしますので、安心してご相談ください。